◇ボールパイソンンの易しい遺伝学

ボールパイソンの遺伝?そんなものに興味はないよ。わけが分からないし意味無 いでしょう。こんなふうに思っている方も多いかもしれません。しかし遺伝学といっても全く難しく考える必要はありません。中学くらいで習うメンデルの法則(それもごくごく基礎的なこと)のおさらいとボールに対する興味があれば簡単に理解できることばかりです。 ボールパイソンにおける遺伝の法則を知るとこのヘビの世界にさらに深くはまることができるばかりでなく、繁殖を志す上でもモチベーションが極めて高くなることは間違いないでしょう。飼育者の皆様にボールパイソン遺伝学のおもしろさに触れていただき、より深く BallPythonと付き合っていただくことが、日本におけるニューモルフ作出につながっていくことと確信しております。
                    Bp・Supply  ジェネ

◆ ボールパオソンの易しい遺伝学・はじめに
◆ メンデルの法則
◆ ヒトの血液型に置き換えると
◆ 優性遺伝する品種
◆ パネットの四角
◆ シブリング
◆ Dominant と Co-Dominant
◆ 劣性遺伝する品種
◆ パネットに四角・解説
◆ 100%へテロからホモ形質を得るまでの道のり・ヘテロの魅力
◆ ヘテロの購入
◆ シュミレーション
◆ プロジェクト
◆ 66%ポッシブルヘテロ
◆ 易しい遺伝学・中級編 其の一
◆ パネットの四角 中級編
◆ 計画例 其の一
◆ 計画例 其の二
◆ Ghost / Hypo Bp・Supplyとしての発信方法
◇ ボールパオソンの易しい遺伝学・はじめに

これからボールパイソンの遺伝について語りますが、ここで述べる個体においていわゆるワイルドタイプ(野生本来の色彩や模様・バリエーションは様々ですが普通に売られている個体群ですね)については忘れてしまってください。あくまでもミューテーション(突然変異と訳すると意味が違ってきてしまいます。現在世界で多くの人々が熱くなっている遺伝する形質を持つ品種のこと)についての話になります。

またいかに突拍子もない色彩や模様を持っていたとしても、2−3代にわたる系統繁殖がなされておらず、遺伝することを証明できていないものに関して、Bp・Supplyはミューテーションと呼ばないでおこうと考えています。ワイルドタイプと区別するためにこのような個体群を(ストライプだろうがバンドだろうがパターンレスだろうが、黒かろうが白かろうが黄色かろうが)「表現形が何々な、ちょっと変わったノーマル」と呼んでいきます。この「ちょっと変わったノーマル」の遺伝性を証明することが、新たなミューテーション作りにつながっていくわけです。

◇メンデルの法則

最初はメンデルの法則について親の形質がどのような割合で子供に伝わるかはいろいろ複雑な要素が絡み合い、さらにその時々の運不運(アメリカのブリーダーはこれを
Good odds/ Bad odds と言い現しています。オッズ 競馬用語のオッズと一緒です)により、必ずしもメンデルの法則どおりにはいかないこともありますがそれには目をつぶってください。

形質とは
ボールパイソンの外観を特徴付ける色彩や模様、表現形のことです。遺伝する形質もあれば全く遺伝しない形質もあります。

遺伝子とは
親の持つ形質を子孫に伝えるためのもの。通常は対になっています。対になった遺伝子の組み合わせやその優劣(すぐれているとか劣っているとかという意味ではなく、ただ単に強いか弱いか)によって子供の表現形が決定されます。

それでは、メンデルの法則のおさらいです。

1. 優性の法則:対になる形質についての遺伝では、第1代には優性形質が現れ、劣性形質は隠れる。

2. 分離の法則:第2代では、優性形質を現すものと劣性形質を現すものの割合が3:1になる。

3.  独立の法則:2対以上の形質を考えた場合、それらの形質は独立して遺伝する。

このようになっていますが、ボールパイソンの場合これを単純に考えすぎると間違い?誤解が生じます。メンデルの法則を理解して欲しいのですが、メンデルで理解することは遺伝子とはどういうものかと、それがどう組み合わさり、さらには分かれていくかということを頭の中で組み立てられれば十分だと思います。

◇ヒトの血液型に置き換えると
ボールパイソンの遺伝に置き換えて理解しやすいのはヒトの血液型です。

ご存じのように血液型にはA 型 B 型 O型 AB型とありまして AはAAとAO、 B はBBとBO 、ABはABのみ OはOOのみということはよく知られています。

ここでいうA、Bの因子は優性で、2つの遺伝子のうち1個でもそうであれば(つまりへテロで)その血液型になります。(ボールパイソンにおける優性のミューテーションです)

一方O型は Oという劣性の因子であるためO遺伝子が2個そろって(つまりホモで)はじめてO型人間が登場するわけです。(ボールパイソンにおける単純劣性遺伝をする品種達です)

AOのヒト、BOのヒトはそれぞれ表現形A型(ヘテロO)表現形B型(ヘテロO)ということになります。

AB型はというとこれは優性遺伝子同士の結合(火花を散らす戦い??)ですから、ボールパイソンではパステルスパイダー、ピューター、パステルモハベ、などといったそうそうたる顔ぶれといえます。

ごくごく単純に言ってしまうとボールパイソンの遺伝はこんなことなのです。きわめて簡単でしょう。この基本を理解していただければ、次に劣性遺伝のダブルへテロやらパネットの四角(Punnett squares)の理解やらに進んでください。

◇ 優勢遺伝する品種
ここで遺伝形質がはっきり解っているボールパイソンのミューテーションについて述べます。

優性遺伝する品種 

Bp・Supplyが確認している現在日本に入ってきているもの

パステル(多数・国内繁殖もあり) 
スパイダー(おそらく数頭、国内繁殖無し)
モハベ(おそらく1ペア 国内繁殖無し)

海外組では

ピンストライプ シナモンパステル、レッサープラッティー、キャリコ
ウォマ、イエローベリー、など1万ドル以上ノットフォーセールまで。

◇パネットの四角

優性遺伝をする品種は先ほども述べましたが2つの対になる遺伝子のうち1個でもあれば(ヘテロの状態で)その表現形質がでます。パステルの遺伝子が仮にP ワイルドタイプ(普通のボールパイソン)の遺伝子をwとすると、Pwの状態で表現形はパステルになります。

パステルPwとワイルドタイプwwの交配では子供の遺伝子型は以下の表のようになります。(これがパネットの四角です)

P
Pw
Pw
ww
ww

Pwが1/2 wwが1/2 つまりパステルが50%出現すると言うことです。

この組み合わせで出てきたwwは表現形もワイルドタイプであり、パステルの因子はまったく持っていません。ですから親がパステルであってもヘテロパステルと呼ぶことは絶対にありません。もちろんパステルだけでなく他の優性遺伝するミューテーションにおいても、ヘテロは存在しません。

◇シブリング
いつの頃からかこのように優性遺伝子を持つ親から生まれたものの、全くその優性遺伝子を持たない子供(もちろん表現形はワイルドタイプ)をシブリングと称するようになりました。ただシブリングといえども、多くのブリーダーは何らかの可能性のある(遺伝が証明されていない)親を優性遺伝するミューテーションと交配することもよくあるので、シブリングの交配を重ねていくと何かがでる可能性があるかもしれません。(あくまでも保証はしませんが)

Bp・Supply Breedのシブリングはどうだって?? それは秘密です。でも 各自が皆、あまり飼育スペースもない訳ですから…、むむむむ。

◇Dominant と Co-Dominant
優性遺伝をする種類にとってもう一つ頭が混乱することがあります。それがDominant/ Co-Dominant 問題です。

Dominantはそのまま訳せば優性遺伝で、定義としては野生型とは異なった表現形をもたらす遺伝子でホモでもまたヘテロでもお互いが同じ表現形を表すとされています。

ところが多くの優性遺伝するボールパイソンはホモ形質になると(優性遺伝子Aが2個並んでAAになると)また異なった表現形になります。いわゆるスーパーと冠がつく品種達で、スーパーパステル、スーパーシナモンパステル(チョコレートあるいはブラックボール)、スーパーモハベ(リューシスティック)、などなど他にもありますがこれらは明らかに定義と異なりホモとヘテロの形質が全く違っています。このようなミューテーションをCo-Dominant(共優性遺伝)と呼んでいます。

今のところスパイダーはおそらくDominantと考えられていますが他のほとんどの優性ミューテーションはCo-Dominantではないかと考えられています。そして、ワイルドやファームハッチの個体の中からこのCo-Dominant(共優性遺伝)個体を探し出す眼力と運、さらにはそれを証明する繁殖技術も、ボールパイソン飼育者(ブリーダー)は試されています。

◇劣性遺伝する品種
Bp・Supplyが確認している現在日本に入ってきているもの

アルビノ(多数 国内繁殖? ヘテロはあり) 
ラベンダーアルビノ(おそらく1頭 まだ遺伝性は証明されていない)
グリーンゴースト(Bp・Supplyストレイン その他)
オレンジゴースト(Bp・Supplyストレイン その他)
パイボールド(おそらく数頭、ヘテロも少し)
アザンティック(ごく少数 VPIストレインなど)
クラウン(おそらくドラゴンハープタイルさん入荷個体のみ)

海外組では

デザートゴースト、ジェネスティックストライプ、キャラメルアルビノ

これら劣性遺伝をする種類は優性遺伝グループと異なり次世代ですぐ結果が出ないので(ホモ/ホモによる検証をのぞく)じっくりと取り組んでいかなければならない種類です。しかしダブルへテロやら、優性因子と混ぜ合わせたり、組み合わせを考えると楽しくてしょうがない、しかもじっくりと長く楽しめるグループといえます。

劣性遺伝子の場合、優性と異なりヘテロでは表現形は現れません。ホモになって初めてその姿を現します。つまりワイルドタイプと交配しても第1世代の子供にその表現形が認められることはありません。

◇パネットの四角・解説
例としてアルビノAAとワイルドタイプwwを交配し、先ほどのパネットの四角を作ってみてみると
A
Aw
Aw
A
Aw
Aw

となり、すべての子供の表現形が、w遺伝子が持つワイルドタイプとなります。そしてすべてがA(アルビノ因子)をもつヘテロ、アルビノへテロ(100%)と呼ばれます。

ここで得られた子供アルビノへテロAwを 親のアルビノAAと交配すると(戻し交配)

A
A
AA
Aw
A
AA
Aw

となり、1/2がAAのアルビノ、1/2がAwの表現形ワイルドタイプで100%の確率でアルビノヘテロになります。

さらに子供アルビノへテロAw同士を交配すると

A
A
AA
Aw
Aw
ww

となり、1/4がAAのアルビノ、残りの3/4が表現形ワイルドタイプとなります。この場合 3/4の割合で出現したワイルドタイプのうちwwという全くアルビノ因子Bを持たない子供がでることに注目してください。
このような状況で得られたワイルドタイプの個体は3頭に1頭は全くノーマルであることから、ヘテロである確率が2/3、すなわち66%ポッシブルヘテロ(ヘテロである可能性が2/3である)と表示されます。

ちなみに劣性遺伝子を持つホモ個体同士を交配すると、その子供はすべて親と同じ形質を持って産まれてきます。パイボールドとパイボールドを交配すればその子供はすべてパイボールドです。目がくらくらするような光景ではありませんか。Bp・Supplyでも昨年オレンジゴースト×オレンジゴーストでその目がくらむような至福な時を経験したメンバーがいます。

アメリカではこれら遺伝形質がはっきりと証明された品種を用いて様々な改良品種(デザイナーモルフ)を作出していますが、このように作られた品種(たとえばバンブルビーやスノー、ピューターなど)が将来どうなっていくのか、同じ形質が子孫に受け継がれていくのか、あるいは再び元の品種に戻っていってしまうのかについては今後の検証を待たないといけません。

◇100%へテロからホモ形質を得るまでの道のり・ヘテロの魅力
ボールパイソンのミューテーションは高価です。優性遺伝するものはともかく、単純劣性遺伝(片親だけではその子供に同じ形質が現れない)の品種でもっとも安いゴーストでもホモであればオスで20万くらい、メスではその倍近い値段となります。アルビノも程度によっていろいろですが50万くらいから、アザンティク(黄色色素欠乏)、パイボールド、クラウンなど、100万を軽く超える値段が付いています。その他、キャラメルアルビノ、ラベンダーアルビノ、ジェネティックストライプ、デザートゴーストなど、アメリカでも最低1万ドル以上、さらにNot For Saleで値段も付いていないものも数多くありといった状況で、まあおいそれと購入できません。アメリカでもこれらのミューテーションのホモ個体を買えるのは、ごく一部のブリーダー達で、多くのアマチュア愛好家はこれらのヘテロを購入してホモ個体作成に夢をかけているのが現状です。

以前はボールパイソンのへテロというと何となくいかがわしいというか、はっきりと分からない個体もいたようですが、現在では各ブリーダーがその名誉にかけて販売しているヘテロ個体は、確実に(ポッシブルへテロはその割合に応じてですが)遺伝する形質因子を持っていることは間違いないようです。幸いなことにこのヘテロ(100%へテロ)は、ホモ個体の数分の一から10分の一程度の値段で(それでもアフリカから来るファームハッチのノーマル個体よりは高価ですが)購入でき、しっかりと繁殖を繰り返していけば、いつか夢のスーパーモルフを生むことができる「血統・遺伝子」を持っている個体と言えます。

ボールパイソンをただコレクションするだけであれば、ファームハッチ個体から自分の気に入ったものをピックアップしていればよいのですが、もしもあなたが将来何らかのモルフ作成を考えた場合、これらファームハッチ個体のほとんどは(優性形質のオスとかけることができるメスをのぞいて)使い道のないボールパイソンになる可能性が高いものです。各人の飼育スペースにも限りがあるでしょうし、また将来繁殖をしていくとどうしても自分で持っていなければ困る(可能性のある子供達)個体の数が間違いなく増えていきます。将来のボールパイソンブリーダーを目指すのであれば、経済的に負担にならないヘテロ個体からまずスタートすることもありかなとBp・Supplyは考えます。

◇ヘテロの購入
ボールパイソンのへテロは今まであまり日本では販売されていませんでした。たしかに繁殖を考えないのであれば、見た目は全くノーマル個体と同じでしかも値段は何倍もするヘテロがたとえ市場に出たとしても誰も振り向かないのも当たり前かもしれません。最近ようやくボールパイソンの繁殖を志す方も徐々に増えてきているようで(実際繁殖させるとボールパイソンのおもしろさは何倍にもふくれあがります)、さらにドラゴンハープタイルさんなどの努力の結果、ヘテロ個体が少しずつ流通してきています。ドラゴンハープタイルさんは、アメリカのブリーダーと同様に自分のファシリティーで繁殖させたヘテロ個体を販売されていますが、ヘテロの場合このように繁殖者の名誉にかけての販売が確実です。

個人繁殖者から親の個体を見ての購入、あるいはショップにおいてもどこの誰が殖やしたのかはっきりと分かる方法で販売されているもの(責任の所在がしっかりしている)でないといけません。HBMやぶりくらなどのイベントで繁殖者から直接買う形もヘテロ購入においては理想的です。

このようなブリーダーから100%ヘテロをペアで購入できれば、その子供に1/4の確率でホモ個体が誕生します。これがもっとも確実な方法ですが、残念なことになかなか100%ヘテロのメスは販売されません。その理由はブリーダー(多くの場合当然ホモ個体のオスを持っています)が、さらにホモ個体を得るため販売に回さずストックしてしまうからです。100%へテロのメスとホモのオスを交配すると、その子供には1/2の確率でホモ個体が誕生しますから手放さないのも当然です。仮に売られていたとしても、メスはオスの数倍の値段で取引されるようです。

◇ シュミレーション
一般的には100%へテロのオスを購入し、それとノーマルのメスを掛け合わせることによってさらにヘテロを作成し、そこからホモを得るというのが多い筋道だと思います。ここでこのような組み合わせでいつになればホモ個体を得ることができるかをシミュレートしてみます。

シミュレーション

アルビノへテロとノーマルのメスの幼体を購入し、アルビノ個体を出すプロジェクト

しっかりと育成し、3年目に100%アルビノへテロ オス Aw (ホモはAA)とノーマルメス ww を交配した場合

w
A
Aw
Aw
ww
ww

1/2がAwのへテロアルビノ 1/2がwwのノーマル(外見的にはすべての子供がノーマルであるが、このような子供のことを50%ポッシブルへテロと呼ぶ)ここでメスが2匹とれたとすると確率的には1/2(1匹)がアルビノへテロです。このメス2頭が繁殖可能年齢(順調に生育させて生後3年くらい)になったとき、父親であるアルビノへテロと交配すると確率的には1/2(メスがヘテロである確率)×1/4(ヘテロ同士で交配したときにホモが出る確率)×2頭の産卵数 のホモ個体を得ることができます。

たとえば2頭のメスで8頭の子供がとれればその中の1頭がアルビノと言うことです。もちろんメス個体がどちらもアルビノ因子を持っていないwwである可能性もあります。(その場合の子供はすべて表現系がノーマルで50%のポッシブルへテロ)メス個体が両方とも運良くヘテロであるなら、子供の1/4がホモになります。(その場合他のノーマル表現系の個体は66%ポッシブルへテロ)

もしもすべての子供がノーマルの表現系であった場合、翌年同じ組み合わせで再度交配し、やはりノーマル表現系しか現れなかった場合、そのメスはヘテロでないと判断した方がよいでしょう。

◇ プロジェクト
プロジェクトの途中でかなりの数のポッシブルへテロを得ることができます。これらのポッシブルへテロはメス個体であれば父親である100%へテロと交配して、ヘテロであるかどうかを確かめるとよいでしょう。(ヘテロであれば1/4の確率でアルビノを得ることができます)つまりなるべく高い確率でアルビノを得ようと考えるなら、このプロジェクトの間生まれてくるメスはすべてキープして元のオス親と掛け合わせる必要があります。

このプロジェクトの場合、運がよければ6年目くらいでホモ個体がとれます。このプロジェクトが成功し、アルビノが出てきた孵化の瞬間のことを考えると…・、まさに至福の時、恍惚感ではないでしょうか。

運が悪くても確率的に言えば10年以内にホモ個体がとれますが、その間膨大な数のノーマル個体やポッシブルへテロ個体を生産することになりますので、覚悟が必要です。もっともこのような国産個体は、丈夫で病気の心配も少ないので、たとえノーマルであっても野生捕獲個体やファームハッチより飼育し易いはずです。いわゆるペットとしてボールパイソンを飼育しようと思っている人々には、最適のヘビとなることでしょう。

◇ 66%ポッシブルヘテロ
66%ポッシブルへテロ(オス)を用いた場合

この場合、最初に購入した個体がヘテロかそうでないただのノーマルかということが重大な問題です。66%すなわち3頭のうち2頭はヘテロであるわけで、この2頭に当たればあとは100%ヘテロを用いたプロジェクトと全く同じ図式でホモ個体が得られます。

ところがハズレ個体(全くのノーマル)を引いてしまった場合は、何年かかっても絶対にホモ個体(この場合アルビノ)が出ることはありません。この結果が出るのは8−10年後ですがそれだけ頑張ってホモが出ないときは、残念ながら最初の選択が間違っていたことになります。得られた子供達はすべてノーマルと言うことになるのです。

次に一見良さそうな、
66%ポッシブルへテロ×66%ポッシブルヘテロの交配の場合

1回目でホモ個体を得る可能性もありますが、もしも最初のあるいはその次の産卵でもホモを得ることができなかった場合、雄雌どちらに問題があるか(どちらかあるいは両方がヘテロでない)判らず、泥沼にはまる恐れがあります。一発屋さんにはよいのかもしれませんが、将来的なことを考えるとあまりお勧めできない組み合わせです。

66%へテロを用いてのプロジェクトは上記のようにそれなりのリスクを含んでいます。最初のギャンブル(ヘテロ個体を引くかノーマル個体を引くか)によって、アルビノ作出という目標から考えると無為な10年間を過ごしてしまうかもしれません。しかしそのプロジェクトの過程であなたは間違いなくボールパイソン繁殖のエキスパートになっているはずです。決して無駄な10年ではないと考え、その繁殖技術を生かして100%へテロあるいはホモ、優性遺伝形質を持つモルフの繁殖に邁進してください。

◇ 易しい遺伝学・中級編 其の一

とりあえず単純な遺伝についての仕組みが理解できれば、さらに次の段階に進みます。

これには単純劣性遺伝するモルフ同士の、ダブルへテロ、さらにダブルへテロ同士の交配、また優性遺伝するモルフと劣性遺伝子を持つモルフとの交配など。パネットの四角もやや複雑になってきますが、ボールパ
イソンの遺伝でもっともおもしろい部分です。さらに優性遺伝するモルフ同士の交配では、メンデルの法則に従わない例(ピューターやモハベスパイダーなど)も出てきて頭が混乱するかもしれませんが、何が出る
か分からない、一攫千金ビルオーナーコースとも言えます。

はじめはもっとも日本で可能性があるデザイナーモルフ、パステルゴースト作成(優性遺伝するモルフと単純劣性遺伝するモルフの組み合わせ)から考えてみます。他にも ハイポモハベ、アルビノスパイダーDominant なので微妙に異なるが)、なども同様に考えることができます。この理解にはダブルへテロの意味 メンデルでは優性の法則 独立の法則の理解が必要となります。

◇ パネットの四角 中級編

では、パネットの四角に当てはめながら解説していきましょう。

先ず、優性遺伝のパステルをPw・劣性遺伝のゴーストをggとします。  

p は パステル因子 
(特徴:遺伝形質としては明るい黄色い体色、ゴールドの目、腹部3枚の鱗が白いなど)

g は ゴースト因子 
(特徴:淡くぼけたような体色、脱皮殻に模様がない)

W は ワイルド因子

パステル形質の個体でゴースト因子を持っていない個体の遺伝子型を説明上 Pwww とする。( w 野生型遺伝子)
ゴースト形質でパステル因子を持っていない個体の遺伝子型を wwgg とする。

この両者を交配すると、

wg
wg
wg
wg
Pw
Pwgw
Pwgw
Pwgw
Pwgw
Pw
Pwgw
Pwgw
Pwgw
Pwgw
ww
wwgw
wwgw
wwgw
wwgw
ww
wwgw
wwgw
wwgw
wwgw

wwgw ゴーストへテロ(表現形ノーマル)とPwgw パステルへテロゴースト 1/2が表現形パステル すべてがヘテロゴーストと成ります。

◇ 計画例 其の一

その後の交配には色々なパターンが存在するのですが、計画的 例を示しますと。

1、 パステルへテロゴーストPwgw とゴーストwwggの交配いわゆる親との戻し交配

wg
wg
wg
wg
Pg
Pwgg
Pwgg
Pwgg
Pwgg
Pw
Pwgw
Pwgw
Pwgw
Pwgw
gw
wwgg
wwgg
wwgg
wwgg
ww
wwgw
wwgw
wwgw
wwgw

wwgw ヘテロゴースト (表現形ノーマル)
wwgg ゴースト 
Pwgw パステルヘテロゴースト 
Pwgg パステルゴースト           1/4ずつ

◇ ◇ 計画例 其の二

2、 パステルへテロゴーストPwgwとパステルへテロゴーストPwgw の交配 子供(F1)同士の交配

Pg
Pw
gw
ww
Pg
PPgg
PPgg
PPgg
Pwgw
Pw
PPgw
PPww
Pwgw
Pwww
gw
Pwgg
Pwgw
wwgg
wwgw
ww
Pwgw
Pwww
wwgw
wwww

PPgg スーパーパステルゴースト 1/16
PPgw スーパーパステルヘテロゴースト 2/16
PPww スーパーパステル 1/16
Pwgg パステルゴースト 2/16
Pwgw パステルへテロゴースト 4/16
wwgw ゴーストへテロ 2/16
wwgg ゴースト 1/16
Pwww パステル 2/16
wwww ノーマル 1/16

ノーマル表現形の3頭は66%ポッシブルへテロゴースト
スーパーパステル3頭は66%ポッシブルへテロゴースト
パステル3頭は66%ポッシブルへテロゴースト

理論上はこのようになります。

スーパーパステルゴーストはまだアメリカでも作られていないので(2005年には出てしまうかもしれませんが)、将来の目標とも成ることでしょう。

◇Ghost / Hypo Bp・Supplyとしての発信方法

Ghost ゴースト / Hypo ハイポ  解説 
遺伝:劣性遺伝  遺伝性・遺伝形質の証明は1994年、N.E.R.Dにより成されました。黒色色素が減少した事から、体色(模様)が全体的に不明瞭でぼやけた印象の色彩変異。色彩の違いにより個体のもつ印象は様々ですが、その全てに於ける幻想的で優美な風貌はとても趣があり、正に日本向きMorphと言えます。成長に伴う暗化傾向(ブラウンアウト)があるBall Pythonにとってこの黒色色素の減退(減少)は成蛇の色彩を美しく保つ要因として とても魅力的「血」である事から、プロジェクトを組む上での重要なMorphとされ、優性形質との交配によりゴーストスパイダーやハイポモハベなどの素晴らしいNew Morphが生み出されています。

USではGhostをHypo / ハイポ (ハイポメラニステック / Hypomelanistic )の一形質と捉え、一つの括りで示す傾向にありますが、我々の判断としては、「まだ結論を出せない」と言う状態にあります。その理由としては、現在USにてGhost表記される個体の中には、実に様々な形質・タイプが混在している事に始まります。例えば「脱皮殻に模様の痕跡がない」と言うGhost / Hypoの定説を覆す、脱皮殻にうっすらと模様の痕跡が確認できる個体や、本来「黒色色素が減少している」筈の暗色部に鮮明な黒色を示す個体がいるなど、全てをひとつの方程式で解説できないのが現状です。また形質の遺伝性においても異系統では相互性がない場合があるなど、系統により独立した遺伝形質を持つと考えられ、現在1つの括りとして収められているGhost / Hypoには、その個体(系統)ごとに様々な形質・遺伝性が存在すると捉える事の方が正しいと思うのです。また、プロジェクトを進める上でも、この系統を捉えた計画を組む事が、将来の結果への近道となる事と思います。Bp・Supplyでは以上の事柄を踏まえ、今後は遺伝性の確定したHypo系質(黒色あるいは茶色の色素が減少した色彩変異)の個体にはGhost / Hypo (ゴースト/ ハイポ)との「称号」で示し、それ以外の「その様に見える個体」にはGhost (ゴースト)と言う「商号」で呼び分けようと考えています。また その発信方法も個体ごとに形質の証明が成された場合に初めて系統別表記にて発信すると言う方向性で進める事を決めました。Bp・Supplyでは、2003年にGreen Ghost 、2004年にYellow GhostのGhost / Hypo オリジナルストレインを確立。系統の維持と共に優性形質との融合による更なる可能性に向けての計画を進めています。
Bp・Supply レギウス